分析するためではなく、好きだから
何かを分析するため。
今年のトレンドをまとめるため。
すぐにお客様への提案に活かすため。
もちろん、そういう視点がまったくないわけではありません。
けれど今回、現地で私がしていたことは、もっと感覚的なものでした。
かっこいいと思った瞬間に足を止める。
空間の空気に惹かれて、写真を撮る。
素材の表情や、光の入り方や、家具の佇まいに心が動く。
言葉にする前に、まず感覚が反応している。
トレンドの分析は大手のメーカーさんにお任せして、
私なりのレポートをつづってみたいと思います。
街全体がデザインになる時間
ミラノには、街そのものにインテリアやデザインが呼吸しているような空気があります。
家具、建築、ファッション、アート、ブランドの世界観。
それらが別々に存在しているのではなく、自然に重なり合っている。
特にミラノデザインウィークの期間は、街全体がデザインの熱を帯びます。
ショールーム、展示会場、街角、ホテル、レストラン。
どこにいても、何かしら美しいものに出会う可能性がある。
遊びごごろ満載の展示があり、それをカップルで楽しむ文化や、
何時間も並ぶような展示にひたすら並び続けるデザインへの情熱。
予約制のところが多いのですが、予約できないイベントは、もう並ぶしかなく、
限られた時間の中ではとても制覇できず、私も泣く泣くたくさんのイベントを諦めました。
だから、ミラノに行くと実際はバタバタです。
実際に日々の歩数は2万歩超え。
ただ単に予定をこなす忙しさではなく、感覚がずっと動いているような忙しさもあります。
フィエラ会場入口

街中の休憩スペースもデザインウイーク仕様

Boffi ー大人気キッチンー 行列は続くよどこまでも

Dior 等のファッションブランドのイベントも大人気

新規オープンのPoliform ショールームは人人人!

ハイブランドで体感した世界観
今回、いくつかのハイブランドでは、
日本人スタッフの方にアテンドしていただく機会にも恵まれました。
家具そのものを見るだけではなく、
そのブランドがどのような世界観を持ち、
どのように空間をつくり、
どのように人を迎え、
何を大切にしているのか。
そうしたものを、現地の空気の中で直接感じることができたのは、とても貴重な経験です。
企業や組織に所属しているわけではない、独立したインテリアコーディネーターとして、
このような場に立ち会えたことは、私にとって大きな財産です。
日本のスタッフの方々にはとても親切にしていただき、
街中の喧騒から離れて、とても充実した時間を過ごすことができました。
いち早く素敵なデザインに触れさせていただけたことに大変感謝しています!
Poltrona Frau モンテナポレオーネの常設店舗の見応え!

Molteni パラッツィオ のエレガントかつ力強い空間構成

Minotti はフィエラ会場の中でも最も広い展示。圧巻の世界観。

やっぱり、イタリアモダン家具が好き
そして今回あらためて思ったのは、
私はやっぱり、イタリアモダン家具の世界が好きなのだということです。
端正で、洗練されていて、でも冷たすぎない。
緊張感があるのに、どこか人の体温を感じる。
上質でありながら、暮らしから遠ざかりすぎない。
イタリアモダンの家具には、単に「高級」「おしゃれ」という言葉だけでは言い切れない魅力があります。
空間の中で主張しすぎず、でも確かな存在感がある。
素材の良さ、フォルムの美しさ、余白の取り方、光との相性。
それらが重なったときに生まれる空気が、私はとても好きです。
誰にも気が付かれないようなこだわりの異常性。
「何だこりゃ?」というような謎のデザイン。
そんなものにも出会えるのも楽しみの一つです。
すぐに仕事へ変換しなくてもいい
今回のミラノで見てきたものを、すぐに
「これはこういう提案に使えます」
「今年の傾向はこうです」
と整理することは、今の私には少し違う気がしています。
正直なところ、もうかなり成熟している市場のため、
”これがトレンド”ということはないようにも思いますし、
個々のお客様の好みを形にする私が、それを分析することにも意味はありません。
もちろん、見てきたものは私の中に残っています。
けれどそれは、資料のように整理された情報というより、
もっと身体感覚に近いものです。
この素材感が好きだった。
この照明の暗さが心地よかった。
この余白に品があった。
この家具の置かれ方に、静かな強さを感じた。
このブランドの空間には、説明しすぎない美しさがあった。
そんな感覚の積み重ねが、少しずつ自分の目を育てていくのだと思います。
そして結局何回訪問しても決して飽きることのない、自分のインテリアへの情熱の再確認!
好きで見続けることが、感性を育てる
インテリアの仕事は、寸法や機能、予算、納期のような現実的な要素がとても大切です。
でもそれだけでは、心が動く空間にはならない。
何を美しいと感じるのか。
どんな空気に身を置きたいのか。
どこに品を感じ、どこに違和感を覚えるのか。
そうした感覚は、一朝一夕で身につくものではなく、
好きで見続けること、触れ続けること、体験し続けることで育っていくものだと思っています。
だから私は、ミラノへ行きます。
学ぶためでもあり、仕事のためでもあり、
でも何より、好きだから。
イタリアの家具、イタリアの空間、イタリアの美意識。
そこに身を置くことで、自分の中の感覚が少しずつ磨かれていく気がしています。
次回からはブランドごとの記録へ
今回のブログでは、まずミラノ全体で感じたことを、総論のように書いてみました。
次回以降は、実際に訪れたブランドごとに、
その場で感じた空気や、印象に残った空間、私の中に残っている感覚を少しずつ綴っていきたいと思います。
ブランドの解説というより、
イタリアモダン家具を愛するインテリアコーディネーターとして、
私が現地で何を感じたのか。
そんな私的な記録として、書いていけたらと思っています。
DREAM INTERIOR
加藤英里
インテリアは、人生をアップデートする入口
馴染みだけで選べば、暮らしは既知の範囲に閉じ込められます。
でも、未知に触れた瞬間、暮らしの質は少しずつ、確実に変わり始めます。
その変化が、その人の生き方を静かに押し上げることだってある。
私は、これからもお客様がまだ見たことのない世界へ、そっと光を当て続けたいと思います。
インテリアコーディネーター資格取得後、
メックデザインインターナショナルにてモデルルーム設営に携わり、
二級建築士取得後は、野村不動産にてマンションの商品企画を経験。
空間デザインと不動産、双方の視点から住まいづくりに関わってきました。
2015年に独立以降は、個人邸を中心に、
住まい手の価値観や美意識を丁寧に読み解くインテリアコーディネートを行っています。
DREAM INTERIORが大切にしているのは、
流行や装飾に左右されない、その方の人生に静かに寄り添う空間。
インテリア提案から家具の選定・販売、施工までを一貫して担い、
完成形はCGによって事前に共有。
「選ぶ」「決める」「迷う」といった思考と判断の負担を極力手放し、
本当に集中すべき時間と感性を守るための住環境を設計しています。
2006年よりミラノ・サローネを現地視察し、
イタリア本国の家具ブランドやショップの空気感、
素材やディテールの変化を、日本の住空間へと落とし込んできました。
完全ワンストップ、かつ完全委任型のインテリアデザインサービスとして、
一邸一邸、丁寧に向き合っています。
デザイン主導型フルリノベーション